Polis (pol.is) とは
【中学生向け・やさしい日本語バージョン】Polis(ポリス)ってなに? ~みんなの意見をAIで「見える化」するしくみ~
■ Polis(ポリス)ってなに?
Polis(ポリス)は、インターネットを使って「たくさんの人の意見を集めて、わかりやすくまとめる」ためのツールです。ウェブサイトpol.isにアクセスして、だれでも無料で使うことができます。
ふつうのアンケートとはちょっと違います。Polisでは、まず誰かが「意見(ステートメント)」を書きこみます。たとえば「学校の制服は自由にしたほうがいい」のような意見です。ほかの参加者は、それに対して「賛成」「反対」「パス(わからない)」のどれかをボタンで選ぶだけ。長い文章を書く必要はありません。
すごいのは、集まった大量の投票データをAI(人工知能)が自動で分析して、「意見の地図」をつくってくれることです。この地図を見ると、「だいたい同じ考えの人たちのグループ」がどこにいるか、「みんなが意外と同意している意見」はどれかが、ひと目でわかります。
■ どうやって動いているの? ~Polisのしくみ~
Polisのしくみは、大きく3つのステップに分けられます。
ステップ①:投票データを数字にする
参加者が「賛成(+1)」「反対(-1)」「パス(0)」を選ぶと、それが数字のデータになります。Polisが見ているのは「誰がどの意見に賛成・反対したか」という数字のパターンだけ。書いた文章の中身をAIが読んでいるわけではありません。これがPolisの大きな特徴です。文章を読まないので、どの言語(日本語でも英語でもスペイン語でも)でも同じように使えます。
ステップ②:「意見の地図」をつくる
集まった投票データを「次元削減」という数学のテクニックで2次元のマップにします。イメージとしては、教室の中で「同じ意見の人は近くに集まってください」と言ったようなものです。考え方が似ている人どうしは地図の上で近くに表示され、考え方が違う人どうしは遠くに表示されます。
ステップ③:グループ分け(クラスタリング)
AIが自動的に「投票パターンが似ている人たち」をグループにまとめます。たとえば「グループA:環境を大事にしたい人たち」「グループB:経済を優先したい人たち」のように分かれます。でも、全員が対立しているわけではなく、「実はグループAもBも同意している意見」が見つかることもあります。これが「合意点の発見」と呼ばれるPolisの一番大事な機能です。
■ Polisはどうやって生まれたの?
Polisは2012年ごろ、アメリカのシアトルでコリン・メギルさんたちによってつくられました。きっかけは「SNS(TwitterやFacebookなど)ではケンカや対立ばかりが目立って、建設的な話し合いができない」という問題意識でした。
SNSでは声の大きい人やフォロワーの多い人の意見ばかりが注目されがちですが、Polisでは全員の投票が同じ重さで扱われます。また、返信やコメントで炎上するようなことがない設計になっています(他の人の意見に直接返信することはできません)。
Polisのソースコード(プログラムの設計図)は公開されていて、だれでも自由に見たり、改良したりできます。こういうソフトウェアを「オープンソース」と言います。
■ 世界でどうやって使われているの?
Polisは世界中でいろいろな場面で使われています。特に有名な例をいくつか紹介します。
【台湾(たいわん):一番の成功例!】
台湾では、Polisが政府の政策づくりに実際に使われています。たとえば、Uberのようなライドシェア(配車アプリ)をどう規制するかという問題で、タクシー業界と利用者の間で意見が大きく分かれていました。Polisを使って何千人もの意見を集めたところ、対立しているように見えた両者にも「安全性は大事」という共通の合意点があることがわかりました。この結果をもとに、実際の法律がつくられました。台湾のオードリー・タンさん(デジタル担当大臣)が中心になって、この取り組みを進めました。
【オーストリア:気候変動について】
2022年、オーストリアでは5,000人以上の国民がPolisを使って「気候にやさしい未来のために何をすべきか」を話し合い、その結果は議会に提出されました。
【ウルグアイ:国民投票と一緒に】
2020~2021年、南米のウルグアイでは大きな法案について16,000人以上がPolisで議論に参加。単純な「賛成か反対か」だけでなく、もっと細かい意見の違いや一致点がわかりました。
【若者の声:ブータン・パキスタン・東ティモール】
国連の機関(UNDP)がPolisを使って、30,000人以上の若者から気候変動対策についての意見を集めました。
【アメリカ・ケンタッキー州:地域の計画づくり】
政治的に対立が激しいアメリカでも、地域レベルでPolisを使ったところ、意外な合意点がたくさん見つかり、まちづくりの計画に活かされました。
■ 似たようなツールと何が違うの?
ネットで意見を集めるツールはPolisだけではありません。ほかにもいろいろあります。
Loomio(ルーミオ):小さなグループで「みんなで決める」ための話し合いツール。掲示板のように議論して、最後に投票で決めます。Polisのように大人数の意見を自動で地図にする機能はありません。
Decidim(デシディム):市や町が市民と一緒にまちづくりを考えるためのツール。提案を出したり、予算の使い方を決めたりできます。かなり多機能です。
All Our Ideas(オール・アワー・アイデアズ):2つの意見を見せて「どっちがいい?」と選ばせるシンプルなツール。
Polisがこれらと一番違うのは、「大量の人の投票パターンをAIで自動分析して、意見の地図をリアルタイムでつくる」という点です。何千人、何万人が参加しても使えるスケールの大きさも特徴です。
■ Polisのすごいところと、まだ足りないところ
【すごいところ】
合意点を見つける力:対立していそうな人たちの間にも「実はみんなが賛成していること」を見つけ出してくれます。これはふつうの多数決やアンケートではわからないことです。
大人数でも使える:何千人、何万人が参加しても、AIが自動で分析してくれるので問題ありません。
いろんな言語で使える:文章の中身を読まずに、投票パターンだけを分析するので、世界中どこの言語でも同じように使えます。
炎上しにくい:他の人の意見に直接反論できない設計なので、SNSのような炎上やケンカが起きにくいです。
透明性が高い:「意見の地図」をみんなが見られるので、どういう意見があるかが透明にわかります。
【まだ足りないところ】
人手がかかる:AIが分析してくれるとはいえ、結果を読み解いたり、意見をまとめたりするのには専門家の助けが必要です。
参加者のかたよりの問題:ネットに詳しい人や、政治に興味がある人ばかりが参加すると、一般の人の意見とズレてしまうことがあります。「誰が参加するか」はとても大事です。
少数意見が埋もれるかも:Polisは「みんなが合意できる意見」を見つけるのが得意ですが、その反面、少数の人しか持っていない大切な意見が目立たなくなることがあります。
わかりにくい政治との関係:Polisの結果を政治の世界でどう活かすかは、まだはっきりしたルールがありません。台湾のように法律づくりに使っている国は世界でもまだ少ないです。
■ まとめ:Polisが教えてくれること
わたしたちは日常生活の中で「意見が対立してどうしようもない」と感じることがあります。学校のクラスでの話し合いでも、国の政治でも同じです。
Polisは「対立を解決する魔法の道具」ではありません。でも、Polisは「対立の中にも、実はみんなが同意できるポイントがある」ということを見つけ出す手助けをしてくれます。
大事なのは次のことです。
① 意見が違うこと自体は悪いことではない。大切なのは、違いを理解した上で「共通点」を見つけること。
② テクノロジー(AI)は人間の話し合いを助けるツールになれる。でも、最終的に決めるのは人間自身。
③ みんなの声が平等に聞かれるしくみは、民主主義(みんなで決める政治のしくみ)をもっとよくするために大切。
Polisは2012年に生まれてから、台湾の法律づくりや、世界中の市民の対話に使われてきました。これからの時代、AIの力を借りて「もっとよい話し合い」ができるようになることが期待されています。
みなさんも、もし興味があればpol.isにアクセスして、実際にどんなものか見てみてください!
(やさしい日本語バージョン おわり)